■□■ 鶏鳴狗盗(けいめいくとう)の意味 ■□■
どんな人物がどんな場面で役に立つか分からない。
■□■ 鶏鳴狗盗(けいめいくとう)の逸話 ■□■
古代中国は斉(せい)の国に、孟嘗君(もうしょうくん)という賢人がいた。
孟嘗君は身分や過去を気にすることなく、誰に対しても分け隔てなく公平に遇していたので、とても人望が厚かった。
そのため孟嘗君のもとには常にたくさんの人物が食客としてたむろしていて、そこには一見なんの取り柄もないように見える人物や、元犯罪者などもいた。
そんな高名な孟嘗君の噂を聞きつけた秦の昭王(しょうおう)は、孟嘗君を自国に招き、これを重く用いた。
しかし程なく、昭王は孟嘗君のあまりの人望に危機感を抱く。
そして、孟嘗君が実は斉王の眷属であるという家臣の忠言を聞くと危機感は恐怖へと変わり、昭王は孟嘗君を殺すつもりで監禁してしまう。
捕らわれた孟嘗君は、何とか逃げられないものかと昭王の愛人に釈放をとりなしてもらえるよう頼み込んだ。
昭王の愛人:
「うーんそうねぇ…
昭王が大切に保管している白い狐の毛皮があるでしょ?
あれが手に入るなら考えてあげてもいいわ。」
監禁中の孟嘗君がそんなものを手に入れられるワケがない。
困った孟嘗君は、自分の食客たちにそのことを相談すると、いつも仲間内から蔑まれているある1人の男が申し出てきた。
男:
「皆の言うとおりオレには何の取り柄もない。
それどころかここに来る前は、オレは盗みを働く悪党だったんだ。
そんなオレを孟嘗君は皆と同じように分け隔てなく接してくれた。
ここはひとつ、オレに任せてくれないか。」
孟嘗君は感謝し、その男に頼んだ。
するとその男はその夜、狗(いぬ)のように宮中の宝物庫に忍び込むと、いとも容易く毛皮を手に入れ帰ってきた。
そして孟嘗君はその毛皮を愛人に渡し、愛人のとりなしによって無事に釈放されることとなった。
しかしその後、孟嘗君を釈放したことを後悔した昭王が、再び孟嘗君を捕らえようと追手を差し向ける。
孟嘗君は仲間とともに関所まで逃げ延びる。
だが関所に着いた時には深夜になっていた。
関所では夜は旅人を通さないことになっている。
朝、一番鳥が鳴いたら通行を再開するのが規則だった。
朝まではまだだいぶ時間がある。
昭王の追手はすぐそこまで迫っているだろう。
時間がない!と孟嘗君が焦っていると、日頃仲間の中でものまねが上手いだけで何の役にも立たないと軽侮されていた男が、
「コケェーッ!」
と、鶏(にわとり)の鳴き真似をした。
すると関所の役人たちは朝がきたのかと勘違いをし、孟嘗君の一行は無事関所を抜け、逃げ切ることができた。
孟嘗君は鶏のものまねをしてくれた男に感謝し、他の食客たちは、日頃なんの役にも立たないと思われていた人物を公平に遇していた孟嘗君の人物眼に、感服したのだった。
(2006/4/27掲載)